おまたせしました。
13ねん あきふゆ も ・・・
だにえらぐれじす とどきまし た。
どきどき する。
わくわく する。
やわらかく て。
やさしく て。
だにえらぐれじす 13 あき と ふゆ ・・・。
「たいふう」
そのひから、ひねくれおとこは、ねるのも、はみがきも、
あさごはんをたべるのも、ぜんぶひとりでやらなくちやいけませんでした。
ひねくれおとこはしょっちゅうそらをみて、こんなふうにおもうのです。
こんどたいふうがきたら、きっとおれも、ふきとばされてやろう。
「くうちゅうぶらんこのげんり」
きょくげいちゅうのぶらんこのりが、あ、あと2センチゆびがたりない、
そうおもったとき、くうちゅうぶらんこをけります。
するとぶらんこは、ぐいっとやわらかいおなかをのばし、それでぶらんこのりは、
むこうでゆれているびじょのゆびさきをみごとにつかむことができる。
さて、くうちゆうぶらんこは、いきているんでしょうか。
それともしんじゃってるんでしょうか。
「手を握ろう!」
「サーカスは思ったとおりだった。あっちがわとこの世の、ちょうどあいだにある。
ぼくはなんどもあっちがわにひっぱられそうになった。でもすっとおねぇちゃんが
みていてくれた。ぼくにはちゃんとうしろからロープがついてたんだ。だからあんしん。
あんしんしてみるサーカスはひりひりとして、ほんとどきどきだった。
それから、おばあちゃんのかっこうったら、サーカスにぴったりだ。だんちょうさんだ」
「てをにぎろう!」
「わたしたちはずっと手をにぎることはできませんのね」
「ぶらんこのりだからな」
だんなさんはからだをしならせながらいった。
「ずっとゆれているのがうんめいさ。けどどうだい、すこしだけでもこうして」
と手をにぎり、またはなれながら、
「おたがいにいのちがけで手をつなげるのは、ほかでもない、すてきなこととおもうんだよ」
ひとばんじゅう、ぶらんこはくりかえしいききした。
あらしがやんで、どうぶつたちがしずかにねむったあとも、ふたりのぶらんこのりは
まっくらやみのなかでなんども手をにぎりあっていた。
「おばけのなみだ」
ましたのふうけいに、あの、こわれたおもちゃやいしころそっくりのものをみつけると、
もうだめです。つめたいこころはなみだになって、ぽたりぽたりとたれていく。
どかん。どかん。じどうしゃへいの上にそれはおちます。
とうめいなおばけのなみだがものをこわす。
「おしくらまんじゅう(としよりのカモメがもくげきしたこうけい)」
ほっきょくのペンギンたちが、おおきなひょうざんのうえにぎっしりかたまってすごしている。
さむいからあつまっているんだろうか。おしくらまんじゅうみたいにおしあいへしあい。
いちばんそとにいるペンギンがつぎつぎとうみにとびこんでゆく。
あそんでいるわけじゃない。
ちからのつよいものはかたまりのなかにいすわり、よわっちいペンギンをそとへそとへと
おしだすんだ。そしてうみへとおとす。
なんのためにか。
うみのなかにトドやシャチがかくれていないかたしかめるためにだ。
「カエルのルール(サンショウウオがみたできごと)」
カエルのせかいにはルールがあって、だきつかれたのがうんよく、
げんきなめすガエルだったなら、そのめすはだまったままでいます。
じっとだかれたままなきごえをあげない。オッケーのしるし。けれどそれが、まちがえておすだったり、
たまごをうんだばかりのつかれきっためすだったばあい、だきつかれたほうはなきごえをあげる。
どくとくのこえなんだ。まるでこんなふうにいってるみたいな。
はなして、はなした。わたしはちがう。
「しずじかな指の音をこめて」
よるのみなとで、やせたちゅうねんおとこがくちをひらきます。
「きみにプレゼントがあるんだ」
「んまあ!」
おんなのひとがすっとんきょうなこえをあげてふりむく。
スカーフのはじをくちに「くわえてて、はんなかっこうだけど、すごくきれいなひとです。
「いったいなんでしょうね!」
やせたおとこはポケットにいれたてをそっとだします。
おんなのひとのてのひらをとり、やさしくにぎらせます。
「あなた、なんてすてきなこばこ!」
はこをめのまえにかかげながら、おんなのひとはくるくるまわる。
「こんなすばらしいはこ、わたし、みたことありませんわ!あなた、もう、なんていっていいのやら!
まったく、なんてこばこなの!」
「きみ、あのう」
くるくるまわりつづけるかのじょをみながら、やせたおとこはくちごもっています。
「ほんのちょっとでいいから、はこのなかもみてほしいんだけどな」
いしいしんじ ぶらんこ乗り より 。
by acousticsi
| 2013-08-24 21:44
| DANIELA GREGIS